☆家の中や建物の周りをきれいにしたいという気持ちは人間なら誰でも持っている感情だと思います。では、清掃、お掃除という言葉ができて明確にきれいにすることを意識し始めたのはいったいいつ頃からなのでしょう?

1.平安時代

古い時代は家といっても土間の生活なので、あまり掃除という概念はなかったようです。掃除という文化が始まったのは飛鳥時代ですが、庶民に根付いたのは平安時代(710年~784年)と言われています。掃除という言葉が生まれたのもこの時代です。

2.古事記

文献として最も古い清掃の記録はなんと『古事記』の中にあります。古事記は日本最古の歴史書・文学書で、作成されたのは712年。国の誕生から推古天皇の時代まで神々の世界や天皇家の系譜が描かれています。その中に次のような一説があります。
「天若日子(あまわかひこ)の死後、その妻の下照比賈(しもてるひめ)が喪屋(もや)を建てて、鷺(さぎ)を掃持(はきもち)した」
これは箒(ほうき)で掃き出し喪屋を綺麗にすることで、死霊が再び家に帰ってこないようにという儀式なのだそうです。

3.箒(ほうき)

2.で述べたように箒は神聖なもので、神様が宿ると考えられていました。箒神(はきがみ)という神様で、出産に関する神様のひとつで、出産時に無事に掃き出すという安産の神様です。単なる清掃の道具ではなく、神聖なものなのだという事がわかります。

4.神事

元来、清掃とは神道の綺麗に整えて魔を払うという破魔の儀式として生まれた文化で、汚れを払う行為は魔を払って神様を迎えるという意味がありました。
例えば、神社で巫女さんが境内を掃き清めるのは、境内に積もった穢れを祓う意味があります。お相撲の一番の前にも土俵を何度も掃き清めていますよね。

5.お雛様

  そして、なんと七段飾りにも清掃の役目をする人形が飾られています。5段目の仕丁(じちょう)です。内裏様のお供をしたり、庭掃除など御所の雑用をする従者で、3人並んで座っています。手には箒や熊手を持っていて、それぞれ泣き顔、笑顔、怒った顔をしています。これは子供が表情豊かな子に育つようにという願いが込められているそうです。

☆このように清掃・お掃除には古い歴史があり、とても格式の高い神聖なものだということがわかりました。宗教的な意味も含め、日本人とは切っても切れない文化、それが清掃・お掃除といえるのかもしれません。